
遺産相続では、一部の相続人が自身の利益のみを主張し、協議が難航するケースが少なくありません。
自己中心的な要求を行う相続人がいる場合によく生じるトラブルと、法的な対処法を解説します。
がめつい相続人がいるときのトラブル事例と対処法
一方的な主張ばかりを続ける相続人がいると、うんざりするようなトラブルが生じることがあります。
よくある7つの事例について、それぞれの対処法を紹介します。
法定相続分より多くの遺産を要求する

「長男だから自宅は自分がもらう」
「実家を守ってきたので預金も多くもらう」
「ほかの兄弟は十分な収入があるから相続しなくてよい」
などと、法定相続分を超える遺産を要求されることがあります。
もちろん、相続人全員が納得すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることも可能です。
しかし、一人の相続人が希望するだけで、ほかの相続人の取り分を一方的に減らすことはできません。
遺言がない場合には、まず法定相続分を基準として、特別受益や寄与分などの事情を検討しながら遺産分割を進めることになります。
大事なのは、相手から「自分が多くもらって当然だ」と言われても、その理由に法的な根拠があるのかを確認することです。
親の介護をしていないのに同じ取り分を要求する
親を長年介護してきた相続人からすると、まったく介護をしなかった兄弟姉妹が同じ割合の遺産を要求することに納得できないケースがあります。
しかし、親を介護しなかったという理由だけで、相続人の法定相続分が減るわけではありません。
逆に、親の介護をした相続人が、しなかった相続人より多くもらう場合、「寄与分」を認めてもらう必要があります。
民法904条の2も、療養看護などによる「特別の寄与」があった場合の寄与分を定めています。
もっとも、「介護をしていた」という事実だけで、当然に寄与分が認められるわけではありません。
介護の期間・内容・程度、要介護状態、介護サービスの利用状況などを具体的に検討する必要があります。
介護日誌、診療記録、介護認定資料、介護サービスの利用記録、仕事を休んだことが分かる資料などを残しておくことが重要です。
相続財産の内容を開示しない

親と同居していた相続人や、親の財産管理を任されていた相続人が、相続財産の全容を明らかにしないことがあります。
このような場合、相手からの説明だけを前提として遺産分割を進めることはおすすめできません。
まずは預貯金、不動産、有価証券、生命保険などについて、金融機関や法務局その他の資料から客観的に調査しましょう。
遺産の全体像を確定させてから、遺産分割について話し合うことが重要です。
家庭裁判所の遺産分割調停でも、預貯金通帳の写しや残高証明書、不動産の登記事項証明書など、遺産に関する資料を提出して手続きを進めます。
いずれの場合でも、相続財産が隠されている疑いがある場合には、早い段階で弁護士に相談し、どのような財産調査が可能かを確認するとよいでしょう。
生前に財産を受け取った疑いがあるのに認めない
一部の相続人だけが、生前に親から住宅購入資金、開業事業資金、結婚祝いなどの形で多額の現金を受け取っているケースがあります。
一定の生前贈与は「特別受益」に該当し、遺産分割において考慮される可能性があります(民法903条1項)。
ただし、生前に親からお金を受け取っていれば、すべて特別受益になるわけではありません。
金額、目的、親の資産状況、ほかの相続人への援助状況などを踏まえて判断する必要があります。
相手が生前贈与を否定している場合には、早い段階で弁護士に相談しましょう。
被相続人の預金口座の取引履歴、送金記録、不動産購入時の資料などを確認し、客観的な証拠を集めることが重要です。
親の財産を使い込んだ疑いがあるのに認めない
親と同居していた子どもなどが親のキャッシュカードや通帳を管理しており、生前に多額の預金が引き出されていることがあります。
親から贈与されたものであれば、特別受益の問題になります。
一方、親に無断で財産を取得していたのであれば、不当利得返還請求や損害賠償請求などが問題となる可能性があります。
したがって、「使い込みがあるから、その金額を相手の相続分から単純に差し引けばよい」とは限りません。
預金の取引履歴を取得し、いつ、いくら引き出され、その当時の親の生活状況や判断能力がどうだったのかを確認する必要があります。
特に多額の現金引出しが繰り返されている場合には、資料が失われる前に弁護士へ相談することをおすすめします。
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自分に有利な内容の遺言を作らせた疑いがある

親が亡くなった後、「特定の相続人に全財産を譲る」といった、不自然に偏った内容の遺言書が見つかることがあります。
遺言の内容が不公平に感じられるからといって、それだけで遺言が無効になるわけではありません。
しかし、民法は、遺言について法律の定める方式に従うことを求めており、意思能力を欠く法律行為は無効としています。
遺言を作成した当時、認知症などによって遺言内容を理解し判断する能力がなかった場合や、遺言の方式に法律上の問題がある場合などには、遺言の有効性が争われることがあります。
また、遺言を無効にできない場合でも、一定の相続人には「遺留分侵害額請求」を行うことで、最低限の取り分を取り戻すことが可能です。
遺言に疑問がある場合には、安易に遺言が無効だと決めつけず、遺言の形式、作成経緯、遺言者の状態などを弁護士と確認することが重要です。
一方的な遺産分割協議書への署名を迫る
親と同居していた相続人や、相続人の中で発言力のある者が、詳細な説明もないまま、
「これにサインしろ」
と、自分に有利な分割協議書への署名・捺印を強圧的に迫ってくることがあります。
一度署名・捺印した遺産分割協議書を取り消すことは極めて困難です。
不可能と言っても過言ではありません。
少しでも疑問があれば、その場では署名せず、弁護士に内容を確認してもらってから判断しましょう。
脅しや圧力に屈せず、「弁護士に確認するまで判は押さない」と毅然とした態度で拒否してください。
がめつい相続人との話し合いをうまく進めるコツ

相続人同士の話し合いでは、感情的な対立によって余計な問題を生むことがあります。
自己中心的な相続人がいても、冷静に話し合いを進めるため、次の点を意識しましょう。
相手を「がめつい」と非難しない
相手の要求に納得できなくても、「お金に汚い」「がめつい」「親のことを何もしていないくせに」などと非難するのは避けたほうがよいでしょう。
感情的な対立が深くなると、本来は金額や条件の問題だったものが、「相手には絶対に譲りたくない」という感情の問題に変わってしまいます。
感情論は避け、「法律上の権利」「客観的な数字・証拠」のみに基づいて、淡々と話し合いを進めましょう。
相続人以外の親族とは直接交渉しない
私の経験上、相手の配偶者や子供など、相続の当事者ではない親族が口を出してくると、交渉が複雑化します。
自己に相続権がない人は、対立するストレスや紛争長期化のコストについて、危機意識がありません。
そのため、好き勝手にアドバイスをし、相続問題を混沌とさせていきます。
本人の対立感情はそれほどないのに、親世代や叔父叔母が「あの人は何もしていない」「あの人は親せきから嫌われていた」など、あることないことを発言し、対立感情が発生することもよくあります。
もちろん、代理権を与えられている場合や、相続人以外の親族自身に別の法的権利が問題となる場合などは、別途検討が必要です。
「当事者である相続人同士で話しましょう」と毅然と伝え、第三者の介入を遮断したほうが、結果的に早期解決につながります。
メールや書面でやり取りの記録を残す
言った言わないのトラブルを防ぐため、やり取りは可能な限りメール、LINE、手紙などの形に残します。
口頭での話し合いを行った場合も、要点をメモして相手に送付し、確認をとっておきます。
納得できない条件にはその場で合意しない
強圧的に迫られても、その場での口頭合意や署名は絶対に避けてください。
「一度持ち帰って検討します」と告げ、距離を置きましょう。
【関連記事】遺産相続の話し合いを始める時期と進め方、切り出し方を解説
がめつい相続人と話し合うのが難しいときは

相手が一方的に主張するばかりで話し合いにならないときは、法律の専門家に頼るのも有効な方法です。
無理に当事者同士で解決しようとせず、遺産分割調停や弁護士への依頼も検討しましょう。
家庭裁判所の遺産分割調停を利用する
当事者間の協議が整わない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
調停では調停委員(裁判所の第三者)が間に入り、双方の言い分を聞きながら、法的な観点に基づいた解決案を提示してくれます。
相手と直接顔を合わせずに話し合いを進められる点も、大きなメリットです。
相手との交渉や調停を弁護士に任せる
弁護士に依頼すれば、相手との連絡窓口を弁護士に一本化し、
- 相続財産の調査
- 法定相続分の計算
- 特別受益・寄与分の検討
- 使途不明金の調査
- 遺言の有効性の検討
- 遺留分の検討
- 遺産分割条件の交渉
- 遺産分割調停への対応
などを進めることができます。
「相手から連絡が来るだけで疲れる」「何を言っても話が通じない」という状態では、本人同士で話し合いを続けることが必ずしも早期解決につながるとは限りません。
法律上の争点を整理し、双方の弁護士同士で交渉したり、弁護士を窓口として交渉したりするほうが、冷静に解決を目指せるケースもあります。
遺産分割を弁護士に依頼する費用の目安
一般的には、以下が相場になります。
- 相談料:30分5,000円
- 着手金:20万円~50万円
- 報酬:経済的利益の8%~20%の間で依頼者と相談のうえ決定
相続に関する弁護士費用の相場は、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】相続・遺産分割の弁護士費用の相場をわかりやすく解説
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