
相続にはさまざまな手続きがあり、どの手続きを誰に頼むべきか、わからなくなってしまった方も多いのではないでしょうか。
この記事では、相続手続きの流れに沿って、手続き別の適切な依頼先を弁護士が解説します。
記事の最後には、各手続きの依頼先がひと目でわかる一覧表もご用意しております。
相続が始まったばかりで、最初の相談もまだの方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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相続手続きは遺言書の確認から

法律上の相続手続きが開始した後、最初にすべきことは、遺言書があるかどうかの確認です。
遺言書がある場合は、その内容を確認します。
最初に遺言の有無を確認する理由
遺言は亡くなった方の意思を示すもので、相続人の間での協議や、法律が規定している相続分の定めよりも優先する効力を持ちます。
したがいまして、相続人の間で協議を経て遺産分割をした後や、協議が整いそうな場面になって遺言書が見つかった場合、基本的には遺産分割協議は無効となります。
遺産分割協議が無効になってしまうと、再び遺産分割協議をすることになり、時間的にも精神的にも負担が大きくなってしまいます。
このような事態を避けるためにも、遺言の存在と内容を確認することは不可欠です。
遺言書の探し方
亡くなった方が、生前に遺言書の場所を相続人たちに伝えている場合は、遺言書があると言われた場所を探すと良いでしょう。
それでも見つからない場合や、遺言書の場所を知らされていない場合には、金庫の中や仏壇など、遺言書がありそうな場所を探します。
自筆証書遺言書保管制度を利用している場合
自筆証書遺言書保管制度とは、自分で書いた遺言書(自筆証書遺言書)を、法務局(遺言書保管所)で安全に保管してもらえる制度のことです。
この制度を利用している場合は、法務局に問い合わせることで遺言書の有無や内容を確認できます。
公証役場で遺言を作成した場合
公証役場で作成した遺言(公正証書遺言)は、遺言検索システムで管理されています。
亡くなった方が公正証書遺言を作成していた場合は、遺言検索システムを使って遺言書の有無や保管場所を調べられます。
遺言書がどうしても見つからない場合
専門家へ調査を依頼する方法もあります。
専門家としては、弁護士・司法書士・行政書士が挙げられます。
遺言書がある場合の相続手続きと依頼先

遺言書が見つかった場合は、遺言書の種類を確認したうえで、検認や遺言の執行といった手続きを進めます。
遺言書の種類を確認する
民法上の遺言には3種類あります。
1つ目は、自筆証書遺言(民法968条)です。
自筆証書遺言は、遺言を作成する者が全文・日付・氏名を自書し、押印をするものです。
2つ目は、公正証書遺言(民法969条)です。
公正証書遺言は、公証人(法務大臣に任命された中立な法律の専門家)が関与し、公証役場で作成、保管されるものです。
3つ目は、秘密証書遺言(民法970条)です。
秘密証書遺言は、遺言者が署名押印し、内容を秘密にしたまま封じた遺言書を、公証人および証人に提出して作成するものです。
遺言者は、公証人と証人の前で、自己の遺言書である旨と、その筆者の氏名・住所を申述します。
公証人が封紙に提出日と遺言者の申述内容を記載し、遺言者および証人がともに署名押印します。
遺言書を検認する
検認とは、相続人に対して遺言書の存在および内容を知らせ、遺言書の内容を明確にして、偽造などを防止する手続きです。
検認は家庭裁判所に申し立てて行う手続きで、依頼先は弁護士か司法書士になります。
遺言内容を確認する
遺言内容で確認する点は、次の3つです。
- 日付・署名押印があるか
- 特定の者に偏った遺産の分け方がされていないか
- 遺言執行者が指定されているか
遺言執行者を選任する
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために一切の権利義務を有する者のことです。
遺言者の最終的な意思決定が相続人に妨害されることなく、確実かつ迅速に遺言の内容を実現するために、遺言執行者が必要となります。
選任方法は、遺言を作成した方が遺言によって指定する方法と、利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任する方法があります。
遺言を執行する
まず、遺言執行者が就任通知を、相続人全員および包括受遺者(遺産の全部または一定割合を受け取った人)に対して送ります。
その後、財産目録の作成・交付、各金融機関での解約・名義変更、不動産登記手続きを行います。
遺言書の内容に納得できない場合

遺言書が見つかったものの、内容に偏りがあるなど納得できない場合は、遺言内容を争うこともできます。
遺留分侵害額請求を行う
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された者が、遺留分を侵害している者に対して、相続により取得する最低額を支払うよう請求することです。
方法としては、交渉・調停・訴訟があります。
【関連記事】遺留分とは?自分に請求する権利があるのかわかりやすく解説
遺言無効確認訴訟を行う
遺言が無効になるケースとしては、次のようなものが挙げられます。
- 署名押印や日付の記載がない、修正方法が誤っているなど、形式面を理由とする場合
- 認知症で遺言を作成する意味を理解できない状態で作成されたなど、遺言能力を理由とする場合
- 公正証書遺言において、証人になれない者が証人になっていたなど、手続面を理由とする場合
- 強迫・詐欺・錯誤によって作成された場合などの意思表示の面を理由にする場合や、遺言内容が公序良俗に反するなど内容面を理由にする場合
遺言無効確認訴訟は、まず家庭裁判所に調停を申し立て、調停成立に至らない場合には、訴訟へ移行します。
相続人全員で遺産分割協議を行う
遺言執行者が就任していない場合は、相続人間の協議のもと、遺言内容と異なる遺産分割をすることも可能です。
遺言執行者が就任している場合は、遺言執行者の関与のもとで遺産分割協議をすることが安全でしょう。
【関連記事】遺産相続の話し合いを始める時期と進め方、切り出し方を解説
遺産分割協議の流れと手続きの依頼先

遺言書がない場合や、遺言と異なる分け方をする場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
相続人を調査・確定する
まずは、誰が相続人となるのかを確認する必要があります。
亡くなった方の出生から死亡に至るまでの戸籍を取得して、相続人を調査・確定します。
場合によっては、法定相続情報一覧図を作成します。
【関連記事】遺産相続にはどの戸籍謄本が必要?取り方と費用をわかりやすく解説
相続財産・債務を調査する
預金や不動産などの財産と、借入金などの債務を調査します。
遺産が多い場合には、財産目録を作成して整理することも有効です。
相続放棄する場合
相続放棄とは、亡くなった方のプラスの財産、借金などのマイナスの財産、すべてを引き継がないようにする手続きのことです。
必要書類は誰が相続放棄をするか次第で変わりますが、主に次の2つが必要になります。
- 被相続人(亡くなった方)の住民票の除票、または戸籍の附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
相続放棄は、亡くなった方の除票に記載されている最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述をして行います。
限定承認する場合
限定承認とは、亡くなった方のプラスの財産の範囲内で、借金などのマイナスの財産を引き継ぐ相続の方法のことです。
必要書類は誰が限定承認をするか次第で変わりますが、主に次の3つが必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの連続したすべての戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票
- 申述人全員の現在の戸籍謄本
限定承認も、亡くなった方の除票に記載されている最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述をして行います。
単純承認する場合
単純承認とは、亡くなった方の遺産を、プラスかマイナスかを問わず、すべて引き受けることをいいます。
単純承認の場合は、特に必要な書類や手続きはありません。
遺産の分け方を話し合う
誰がどの財産を取得するのか、相続人で話し合いをします。
その際、財産の分け方は、以下の4つが基本となります。
- 現物分割:特定の財産を、そのまま特定の相続人が引き継ぐ(不動産は長男、預金は次男など)。
- 代償分割:特定の相続人が不動産などを現物で取得し、他の相続人に相応の金銭を支払う。
- 換価分割:不動産などを売却して現金化し、その売却代金を分ける。
- 共有分割:財産を特定の持ち分で共同名義のまま共有する。
誰がどの財産を取得するか決まったところで、遺産分割協議書を作成します。
遺産の分け方に納得できない場合

遺産分割協議で示された分け方に納得できない場合は、分け方の見直しを求めることができます。
寄与分を主張する
寄与分とは、亡くなった方の財産の維持または増加に寄与した分について、財産的な評価をすることです。
亡くなった方と共に生活し、身の回りのお世話や介護をしていた場合は、それらの寄与を考慮して遺産を分けることを提案する方法があります。
特別受益を指摘する
特別受益とは、亡くなった方から生前贈与、遺贈などを受けたことによって、一部の相続人が受けた特別の利益のことです。
例えば、亡くなった方から生前に生計のために100万円を受け取っている相続人がいたとします。
その場合は、その相続人が遺産から受け取る金額から、生前に受け取っていた100万円を差し引くことを提案する方法があります。
遺産の使い込みを指摘する
遺産の使い込みとは、遺産分割前に、亡くなった方の遺産を相続人が消費することをいいます。
例えば、相続人の一人が亡くなった方の預金を引き下ろして、現金を消費した場合などがこれにあたります。
遺産の使い込みがあった場合は、それを指摘して、使い込みをした相続人が取得する金額から、使い込んだ金額を差し引くことを提案する方法があります。
遺産分割協議がまとまらない場合
弁護士に遺産分割協議の話し合いを任せる方法があります。
また、裁判所の関与を求める意味で、調停や審判を申し立てる方法もあります。
相続内容が決まった後の手続きと依頼先

遺産の分け方が決まったら、財産の種類ごとに解約や名義変更などの手続きを行います。
預貯金を相続する場合
金融機関に相続手続きを申し出る必要があります。
手続きの詳細は銀行ごとに異なりますが、相続届や遺産分割協議書などの必要書類を提出します。
その後、預貯金の解約・払戻し・名義変更を行います。
株式・投資信託などの有価証券を相続する場合
証券会社などに相続手続きを申し出る必要があります。
手続きの詳細は証券会社ごとに異なりますが、銀行と同様に相続届や遺産分割協議書などの必要書類を提出します。
亡くなった方の証券口座から直接現金化して払い戻すことは、原則としてできません。
同一証券会社内に開設した相続人名義の口座へ移管し、売却するか、そのまま継続して保有します。
不動産を相続する場合
相続登記に必要な書類をそろえ、不動産の所在地を管轄する法務局へ登記を申請します。
その他の財産を相続する場合
自動車など名義変更を要する財産については、名義変更の手続きを行います。
税金に関する手続きと依頼先

相続では、亡くなった方の所得税や、取得した財産にかかる相続税について、申告が必要になる場合があります。
準確定申告が必要な場合
準確定申告とは、年の途中に亡くなった方の、その年の1月1日から死亡した日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことです。
必要書類を収集・作成のうえ、亡くなった方の死亡当時の納税地を管轄する税務署に提出します。
相続税申告が必要な場合
相続によって財産を取得した各人の課税価格の合計額が、遺産にかかる基礎控除額を超える場合、財産を取得した人は相続税を申告する必要があります。
基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)の算式で計算します。
必要書類を収集・作成のうえ、亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。
相続手続きと依頼先まとめ
ここまで解説した相続手続きと、それぞれの主な依頼先を一覧にまとめました。
| 相続手続き | 主な依頼先 |
|---|---|
| 遺言書の調査・確認 | 弁護士・司法書士・行政書士 |
| 遺言書の検認 | 弁護士・司法書士 ※司法書士は裁判所提出書類の作成等 |
| 遺言執行 | 弁護士・司法書士・行政書士など |
| 遺留分侵害額請求 | 弁護士 |
| 遺言無効確認訴訟 | 弁護士 |
| 戸籍収集・相続人調査 | 弁護士・司法書士・行政書士 |
| 法定相続情報一覧図の作成・申出 | 弁護士・司法書士・行政書士など |
| 相続財産・債務の調査 | 弁護士・司法書士・行政書士 |
| 相続放棄 | 弁護士・司法書士 ※司法書士は裁判所提出書類の作成等 |
| 限定承認 | 弁護士・司法書士 ※司法書士は裁判所提出書類の作成等 |
| 遺産分割協議書の作成 | 弁護士・司法書士・行政書士 ※争いがある場合は弁護士 |
| 寄与分の主張 | 弁護士 |
| 特別受益をめぐる交渉 | 弁護士 |
| 遺産の使い込みへの対応 | 弁護士 |
| 遺産分割の代理交渉 | 弁護士 |
| 遺産分割調停・審判 | 弁護士 |
| 預貯金の解約・払戻しなど | 弁護士・司法書士・行政書士など |
| 株式・投資信託などの相続手続き | 弁護士・司法書士・行政書士など |
| 相続登記 | 司法書士(弁護士も可) |
| 自動車などの名義変更 | 行政書士など |
| 準確定申告 | 税理士 |
| 相続税申告 | 税理士 |
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